ホテルのベッドで目が覚め
ゴロンと横を向き
目を開けると
隣にタクミ君が眠っていて
一瞬ここがどこだかわからない感覚に襲われた
そうだった
葬儀に2人できていたんだ
タクミ君を起こさないように
そろっとベッドからでたけど
ベッドの揺れで起こしてしまう
たくみくんも私をみて
一瞬不思議そうな顔をして
「ルイちゃん?
おはよう
今、何時?」
「まだ8時だからもう少し寝たらいいよ
お昼までにお義母さんの
実家につけばいいよね?」
するとたくみ君が飛び起き
「8時?
やばい
10時には親戚が集まるから
準備があるから
9時までには来るように言われてる」
と言われ
「え?
そうなの?
私聞いてないけど!」
「なんでもいいから
とにかく早く支度して
1番最後に顔出したんじゃ
何言われるかわからないから」
たくみ君の言葉で
慌てて用意し
ホテルをチェックアウトし
タクシーで義母の実家へ再びむかった
実家へつくと
義母の妹家族はすでに集まっていた
義母の妹、妹の旦那様、長男、長女、次女
三人の子供達 (旦那の従兄弟達)
義家族
(義父、義母、義姉)
そして祖父と
亡くなった祖母の兄弟などが
すでに揃っていた
お昼を食べてから
解散する予定になっているらしい
「遅くなってしまい
申し訳ありません」
と慌てて持ってきたエプロンをつけ
義姉
「ルイちゃんこっち手伝ってもらえる?
飲み物はあちらにまかせましょ」
と
仕出しで運ばれてくる
お昼のお膳の準備を
義姉とはじめる
義妹家族5人と
義父と義母とたくみ君は
祖父や
祖母の兄弟などの
話し相手をしており
私と義姉2人で忙しくお膳をはこぶ
すると祖父が突然
「その子は妊娠中かね?」
と言った
その場にいる皆んな
シーンとなり
その子とは?
この場で妊娠する年齢の女性は
私、義姉、旦那の従兄弟の2人
誰も妊娠していると言う話は
聞いていない
そもそも私以外
妊娠の可能性がある年齢の女性は独身なのだ
義母が
「お父さん急にどうしたの?」
ときくと
祖父が再び大きな声で私を指差して
「タクミの嫁じゃろ?
妊娠しとるのか聞いている!」
と、、、
私はその日
長距離新幹線移動が
楽なように
お腹周りがふんわりとしたワンピースを
着てその上から
エプロンをしていたので
マタニティっぽくみえたのかもしれない
「いえ、、、まだ、、、」
と消えそうな声で答えると
祖父が再び部屋中に聞こえる大声で
「しっかり頑張りなさい」
と言い放った
慌てた義姉が
「おじいちゃん、、、今はもう時代が違うからね
子供を持たない夫婦も増えてるし
女性だけの問題じゃないのよ」
と言うと
祖父は義姉にすごい剣幕で
「お前はまだスタートラインにも
たっておらん!
いくつになった?
バツイチでも子持ちでもいいから
早く結婚せんか!」
と怒鳴り散らす
祖父の気象の荒さは
家族では当たり前らしく
みんなまた始まった
とさほど気にしてない様子で
御膳をたべはじめる
ターゲットが私から義姉に変わり
ほっとして
とにかく黙って食事をして
祖父の目に入らないように
気をつけた
その間
何故かもう痛くないはずの
子宮外妊娠をした時の
傷跡がズキズキ痛む気がして
お腹をさする
青い顔してうつむく私に気がつき
タクミくんが
「僕たち、そろそろ新幹線の時間なので
帰ります」
と祖父のそばえいき
「おじいちゃん
またくるからね
それまで元気で過ごしてください」
と言うと
「次は赤ちゃんと
3人できなさい」
と言われ
曖昧な返事をして
タクミ君と
逃げるようにタクシーで
新幹線乗り場へむかう
新幹線に乗り
お互い黙って過ごしていたら
タクミ君がふいに
「ルイちゃん、、、嫌な思いさせて
ごめん」
と言ったが
新幹線の窓の外を見つめて旦那の事は
無視した
返事をしたら
泣いているのがバレてしまうから、、、
新幹線をおりて
タクミくんが
「今日はありがとう
ルイちゃんのおかげで
変な言い方だけど
少し親孝行できた気がする
疲れたよね?
マンションまで送るよ」
と私のキャリーバッグをもとうとした
タクミくんの手を払い
「1人で大丈夫」
と歩き出す
タクミくんが後ろから
「次はルイちゃんの好きな
フレンチ予約して連絡するから」
と聞こえてきたけど
一度も振り返らなかった
祖母の葬儀の後から
色んな感情をうまく処理できず
悶々とした日々を過ごしていた
たくみ君が明らかに私の機嫌を取る
「ルイちゃんこのお店予約しようと思うけど
いつならいい?」
と
LINEの内容にもイライラしたし
職場で産休に入る同僚の
挨拶にも
心の底から喜べない自分に
幻滅した
とにかく、もう何も考えたくなくて
凪くんのLINEのブロックを解除した
「久しぶり
いま何してる?」
現実の私を知らない相手と
非現実な空間で
とにかく癒されたい
それが嘘の世界でもいい
もう何も考えたくなかった